「…幸生だ。」
幸生が教えてくれている、そう思った。
あたしは走る、その後に悠も続いた。
消えてしまった幸生は、今もまだあたしの傍にいるの?
ううん、ばあちゃんの傍にいるのかもしれない。
でも、そんなこと、もうどちらでもよかった。
草木を避けるようにして描かれた白線を追いかけながら、あたしは頭の片隅で『奇跡』について考えていた。
あたしと幸生の出会いは奇跡だった。
あたしの目に幸生の姿が映ったことも奇跡。
大変な時代にひっそりと花を咲かせていたハナミズキも、
ハナミズキが誰も近づかない場所にあったことも奇跡だ。
たくさんの奇跡がいくつも重なっていた。
そして、あたしは目の前の光景に言葉を失う。
奇跡だ…。