真っ暗になった山中で、あたしは懐中電灯の光を幸生の背に向ける。
険しい道だっていうのに幸生の足取りは軽い。
それが幽霊だからなのか、元々そうだったのかは分からない。
あたしは息を弾ませながら、何とか幸生のペースについていった。
夜の山登りもいつの間にかすっかり慣れてしまい、ホラーだったりオカルトだったりへの恐怖心も薄くなっていた。
でも、あたしの後ろで悠はぜぇぜぇ息を切らしながら、きょろきょろと辺りを見ている。
「悠、遅い。サッカー部のくせに。」
「っうるせぇな!…ちづこそ、ガキの頃みたいに迷子になるなよ!」
「ならない、ならない。」
昼間は暑いけど、日が落ちた山の中は涼しい気がする。