その日の晩のことです。 兄はとても真剣な顔つきで、母に言いました。 「母さん、赤紙が届きました。」 私たちの間に流れていた空気が凍りました。 母は目を見開いて、唇を小刻みに震わせています。 赤紙とは、つまり召集令状のこと。 軍隊への召集を命じた令状のことです。 母も、私も、そして兄自身も、いずれはこんな日が来ることを分かっていました。