「俺も一度会ってみたいな。佐倉くん、だっけ?」


「路木さん、まだ会ってませんでしたっけ?」


「あぁ。」


「…ただのイマドキの若者ですよ。二重人格だし、性悪だし……不真面目だし。」



そう呟いた私の顔を覗き込むようにして、路木さんは言った。


「けど、抱きしめられてドキッとした?」


「……っ有り得ません!」





胸の内では、抱きしめられた夜の翌日からハピーズ飯崎店でなく南沢町店での仕事でホッとしていた。


佐倉くんに会った時、
どうしたらいいのか、分からなかったから。





私は、やれやれという感じで口を開く。



「相手は6つも年下ですよ。私はもっと大人の男がいいですっ!」


「…大人の男、ね。」


「…何ですか?」


「いや。」




路木さんは柔らかく微笑む。





この人は時々何か含みを持たせるような言い方をする、と思う。


いつもさらりと躱すし、誤魔化すから、私は何かが腑に落ちないまま残ってしまう。



その“何か”が私にはさっぱり分からないのだけど、とにかく“ん?”と思う瞬間があるのだ。