* * *――…
そこは雰囲気の良いレストランだった。
窓から見える夜景は素晴らしかったし、店内にはピアノもあって穏やかでゆったりとしたメロディーを刻んでいる。
夜景が綺麗なレストランで食事という王道パターン、
それが何だか江古田さんらしくて可笑しかった。
お見合い、そして初デート。
流れとしては順調そのものだろう。
「すみません…。」
「え?」
江古田さんは申し訳なさそうに俯く。
テーブルの下でしっかりと握りしめたハンカチ―それには気づかないふりをして―、
すでに額に滲んだ汗。
「僕はあまり詳しくなくて……色々と調べたんですが…ここで大丈夫でしたか?」
「えぇ、もちろん。素敵なお店ですよ、お料理も美味しいし。」
私の感想を聞いて、江古田さんは嬉しそうに笑う。
「良かった。不安だったもので…ホッとしました。」