「俺、何か格好悪いっすね。」
「いいんじゃない?若者らしくて。……それに、私も格好悪いよ。」
「え?」
「引くでしょ?27にもなって男と付き合ったこともないなんて。」
「…いいんじゃないですか?芳乃さんらしくて。」
「何それ。」
自嘲ぎみに笑うと、佐倉くんは言った。
「少なくとも俺は引きませんよ。貴女は貴女だから。」
「…………。」
……バカみたい。21のコに励まされるなんて。
「私ね、お見合いしたの。」
「え?」
「お・見・合・い!
目を逸らしてきたけど、ちゃんと現実考えようと思って。」
「……結婚、するんですか?」
「分からない。でも…悪い人じゃなさそうだったし。
結婚相談所に行ってみようって、きっかけくれたの佐倉くんなのよ。」
「え?」
「あのキスのせい。
いつまでも白馬の王子様なんか待ってるようだから、からかわれるんだろうなぁって。
……変な話、きっかけくれたから感謝してるわ。」
「…そう、ですか。」
佐倉くんと話している間中、私は曇った窓ガラスに落書きをしていた。
ニッコリと笑う棒人間、
残念ながら私に絵の才能はないらしい。
歪な棒人間は、不自然に笑っていた。