「乗ってください。」
車の助手席のドアを開けたサクラくん。
「なぁに?なぁに?けっこうイイ車乗ってんじゃ〜ん。」
漆黒に輝く車の助手席に、傾れ込む。
まるで膜が張っているみたい、目の前がぼやけていた。
飲み過ぎた私に、エンジンをかけながらサクラくんが言う。
「飲むだけ飲んで、最後には眠くなるって。けっこうタチ悪いっすね。」
「キミに言われたくないよ!この二重人格!性悪オトコ!」
私の文句もまるで気にせず、サクラくんは微笑する。
「だって、芳乃さんイジメるの面白いから。」
悪びれもせずに言って、イタズラっぽく笑う。
その発言に憤慨した私を乗せて、車は走りだした。