「…汗、ねぇ。」
電話越しの若菜の声は、まるで困っているようだった。
私はその反応に、つい眉を寄せる。
「重要じゃない?江古田さんと結婚するってことは、汗とも結婚するってことなのよ!」
お風呂上がり、
ソファーに寝転がり天井を仰いだ。
片手に小顔ローラーを持ちコロコロコロコロ、片手には携帯電話。
若菜は苦笑しながら言った。
「でも市役所勤めなんでしょう?印象だって悪くなかったみたいじゃない。」
それを聞いて、私は何も言えなくなってしまう。
「いい?芳乃。
結婚ってのはねぇ、好きとか嫌いとかだけじゃないのよ!
いかに安定した適切な生活が送れるか。子供ができたら、なおさら。」
「…でも、若菜は好きな人と結婚したじゃない。」
「私はデキ婚だもの。
たとえ好きな人と結婚したってねぇ、一緒に生活してくうちに不満だって出てくるのよ。幻滅したり、我慢したり、ね。
結婚なんて忍耐よ。」
経験者は語る、ってやつなんだろうか。
若菜の言葉には妙に説得力があった。
勉強ばかり、仕事ばかりしてきた私。
自分の人生を、
真剣に考えなければならない時がやってきたのかもしれない。
これは27歳、オンナの意地だ。