誰にでも欠点の一つや二つあるはずだ。
私にだって絶対ある。
そんなこと分かってる。
江古田さんは優しそうな人だったし、安定した市役所勤めの公務員だし。
きっと現実的に見たら悪くない話だ。
ただ、汗掻きということさえ除けば…。
想像してみる。
もしも江古田さんと結婚したら、私は江古田さん+あの汗とも一生付き合っていくことになるんだ。
ハンカチを握り締めるクセとも。
それは私が夢見続けてきた『ドラマティックな恋』とは程遠い。
……汗やクセ、私は目を瞑れるだろうか。
結婚って、やっぱり妥協なのかな。
……まぁ平凡同士、釣り合いはとれると思うけどさ。
帰宅した私はずっと考えていた。
バルコニーで、日の暮れた空を眺めながら。
それなりにお洒落をして、気合いも入れていったお見合い。
期待もしていたし、どこかでまだ夢見る芳乃ちゃんの私がいた。
現実は厳しい。
ドラマやマンガだったら、きっとイケメンのセレブか何かに見初められたりするんだろう。
でも、現実はそうはいかない。
思い通りになんてならないし、
悩んだり、迷ったり、格好悪かったりする。