ギュッと握り締めたままのハンカチ、
私はそれが目に入るたびに、どうしてか見てはいけないものを見てしまった気がした。
何だか頼りなさが現れているようで…。
だから、なるべく視界に入れないよう努めた。
江古田さんは額に大粒の汗をかいていた。
それが緊張からなのか、本当に暑くてなのかは分からない。
汗は首筋まで伝うほどだった。
そうなると、私はもう汗ばかりが気になって目がいってしまう。
「岡田さんのご趣味は?」
「あ、えっと…。」
ビールを飲みながら韓流ドラマを見ることだ、なんて言えるわけない。
私は当たり障りなく、料理です、と答えた。
決して盛り上がるわけではないが会話は続いて、私も場の雰囲気に馴染み始めていた。
その頃には頭の片隅でどうでもいいことを考えられるくらいで、
お見合いと仕事の面接は似ているな、と思った。
私は終始、面接を受けているような気分だったし、
きっと江古田さんも同じなんだろう。