「岡田さん、こちら江古田(エコタ)さんです。」



仲介役の女性は簡単な紹介をした。


それは、互いの職業とか性格とか。



そうやってアピールポイントを並べていく女性だけが、この奇妙に張り詰めた空気の中で笑顔だった。




「江古田さんは市役所にお勤めなのよ。」



私は曖昧な笑顔を浮かべる。





江古田さんはコーヒーを注文し、それがテーブルに届いた頃、仲介役の女性はニコニコとしたまま言った。


「では、私はそろそろ失礼しますね。後は、お二人で。」




ウフフと笑う女性は席を立つ。







そして、訪れたのは気まずい静寂だった。





私の登録された写真を見て、所謂お見合いを申し込んでくれた江古田さんはグレーのハンカチを握り締めている。




30歳だという江古田さんに、これといって特徴はなかった。



中肉中背の、可もなく不可もなくなルックス。


私が言えたことではないけれど、平凡という言葉がピッタリな人物だと思った。