「そんなに結婚したいの?」
「…したいですよー。
ちゃんとした人に出会って、ちゃんとした恋をして、ちゃんとした結婚!したいですよ…。まったく、年下オトコにはからかわれるし…。」
「え?」
「いや…何でもないです…。」
私が口を閉ざすと、路木さんはサラリと言った。
「ちゃんとした恋愛って何だろうね。」
その言葉に路木さんを見つめると、彼はグラスに伝う雫を見つめていた。
それから、私と視線を合わせると優しく微笑む。
「変わらないな。昔から芳乃ちゃんは。不器用で真っすぐで真面目、難しく考えすぎなんだよ。」
何も言い返せない。
言われてみれば確かにそう。
ちゃんとした恋愛って何だろう。
恋愛の“れ”の字もよく分かってないクセに。
私は深い溜め息を吐き出した。