平穏を取り戻した『みかづき屋』。
香織さんにレジを任せて、私はバックルームで深い溜め息を吐き出した。
出勤したばかりだってのに酷く疲れた…。
「…こんなの可笑しいじゃないですか。」
「え?」
納得がいかない、佐倉くんはそんな表情をしていた。
私は頭の片隅で、若いなぁ、と思う。
昔、自分にもこんな時期があったかもしれない。
「たかが、きなこ棒で…。芳乃さんまで悪く言われて…。」
「…………。」
「…何で謝るんですか?ちょっとした話の食い違いであんなクレーム言う奴がどうかしてんのに。」
壁に凭れて、私は佐倉くんの言葉を聞いていた。
「…確かに、胸ぐら掴むってのはもうやり過ぎね。
けど、佐倉くんにも非はあった。」
「え?」