こういう場面を仕事を通して何度も経験してきたけど、それでも慣れないものだ。
修羅場だな、
ぽつりと思って、私は意を決してお客さんの元へ向かった。
「お客様、店長の岡田と申します。」
深々と頭を下げる。
そのお客さんは40代前後、小さな女の子と手を繋いでいた。
不安そうな顔をした少女が純粋無垢な瞳で私を見上げる。
どうしてか、それが無性に切なかった。
お客さんは、先程の香織さんとほとんど変わらないことを言った。
それから、
「従業員の教育どうなってんだよ!?どうしようもねぇ店だなっ!!」
と、捲し立てた。
静まり返る店内。
佐倉くんは、私の隣でムスッとしている。
長年この仕事をしていても、こういう時の対処法は一つしかないと私は思っている。