「お客さんが、佐倉くんに『きなこ棒はどこ?』って場所を聞いたらしいんです。それで佐倉くんは案内したらしいんですけど…。」
「うん。」
「佐倉くん、創り物のきなこ棒の場所に案内したらしいんです。『こちらです』って。
でも、お客さんが欲しかったのは創り物じゃない¥42のきなこ棒だったらしくて…。」
「…うん。」
創り物のきなこ棒は1つ¥210、創り物でないきなこ棒は1つ¥42。
置いてある場所も違う。
「『こちらです』って言われたのにないから、ずっと¥42の方を探してたら全然別の場所にあったって。
それで…お客さん怒ってて…。」
つまり、佐倉くんとお客さんの間で話が噛み合ってなかったって事か…。
「それで、お客さんは?」
「それが…。」
その時、店内に怒号が響いた。
「テメェ!ナメてんじゃねぇぞっ!オイッ!!」
足早に向かうとレジでは胸ぐらを掴まれている佐倉くんと、胸ぐらを掴んでいるチンピラ風のお客さん。
佐倉くんは冷たい眼差しでお客さんを睨んでいる。
それを見て、私は一瞬眩暈を感じた。
「あのお客さんです。」
と、香織さんが小声で言った。
「さっきからお前らじゃ話になんねぇから店長出せって…もうどうしていいか分かんなくて……。」
私は大きく息を吐き出した。