「芳乃さんって男慣れしてないでしょ?」
「…は、なして。」
やっと絞りだした声は、自分で思っていたよりもずっと小さな声だった。
「大人の女って感じなのに意外。」
「はなして…。」
佐倉くんは何を言ってるんだろう。
何を考えてるんだろう。
私には到底理解できなかった。
「放しなさい!」
先程よりもずっと冷たく言い放つ。
冷たい瞳で、無機質に。
ここで動揺すれば、きっと佐倉くんの思うツボだ。
佐倉くんの瞳には一瞬苛立ちが浮かび、私の顎を強引に掴んだ。
男と女。
力の差は歴然。
私の抵抗なんて、佐倉くんにはただの悪あがきにしか見えないのかもしれない。
顎を掴む手は滑らかに動き、指先が唇をなぞる。
私は眉を寄せた。