「あーははは、すみません…。」
「…………。」
「芳乃さんって熱いっすね。」
……何だ、コレ……バカにしてんのか?
「それに、けっこうココ硬いでしょ?」
そう言って、佐倉くんは自分の頭を指し示す。
石頭って言いたいのか?
……このコ、何気にかなり性格悪いよね?だいぶ歪んでるよね?
「学生の頃は、校則しっかり守っちゃうような優等生?」
浮世離れした綺麗な顔でジリジリと詰め寄ってくる佐倉くん。
その距離の詰め方が、私が27年という人生の中で体験したことのないもの。
「…だったら?」
何となく、怯んではいけない気がした。
強気に佐倉くんを見上げる。
でも、そのまま私は後退りしていくしかない。
「社会に出てからは仕事一筋?」
佐倉くんは強かに距離を詰めてくる。
次第に私の中に生まれる純粋な恐怖。
ここにある妙な空気や静けさが、余計にそうさせる。
何も答えない私に、佐倉くんは小さな笑みを落とした。
私の背がトンと壁にぶつかった瞬間。
遠慮もなく佐倉くんの手が伸びて、壁に押し上げられるように貼りつけられた。
掴まれた手首に、強い力。
爪先立ちの私の瞳に飛び込むのは、至近距離の佐倉くん。