電話に出てから25分後。
……やっと終わったらしい。
「佐倉くん、タイムカード切って。」
「はい?」
「タイムカード。後5分でキミが電話してた時間分の時給が発生すんの。」
「…まだ仕事終わってないっすよ。」
「終わってなくても切って。」
真っすぐに佐倉くんを見つめる。
決して視線は逸らさない。
佐倉くんは言われたとおり、タイムカードを切った。
そして、私は溜め息。
仕事の覚えは良いし、接客態度だって悪くない。
でも、佐倉くんは…仕事に対する意識みたいなものが欠けている。
「若いからねぇ、恋愛っていうか、彼女が中心になっちゃうのは仕方ないんだろうけど……仕事中はね、止めてもらえる?
これからは気をつけてね。」
決してキツく響かないよう細心の注意を払って言った。
すると、
佐倉くんは一言呟く。
「彼女じゃないですよ。」
「へ?」
「タダのオトモダチ。」
その皮肉っぽい口調も、
その意地悪そうな微笑も、
先日の佐倉くん。
好青年ではない。
不真面目な若者にすぎない。