ちらり、バックルームから佐倉くんの様子を窺う。
佐倉くんはエプロンのポケットから携帯電話を取り出していた。
……仕事中に持ってんじゃねぇ。
心の内でツッコむが、佐倉くんは躊躇うことなく電話に出た。
「もしもし、アリサ?」
……女か。
「あー?これから?無理。俺、疲れてんの。」
……疲れてんのはこっちだ。
「だから無理だって。他の奴に言えよ。」
どうやら、私があの日見た佐倉くんは幻覚なんかじゃなかったらしい。
人当たりの良さはどこへやら、佐倉くんは酷くぶっきらぼうで冷たい声を出す。
これが今流行りの俺様系か?
……何かもう頭痛くなってきた。
しかし、
それから佐倉くんとアリサさんという女性のやりとりは10分以上続き…。
私は頭痛を通り越して、頭にきていた。
まだ仕事中だってのに私用電話。
しかも長いっ!
それにタイムカードだって切ってないじゃない。
電話中に発生する時給……放り出したままの売上報告……。
さすがに二度目のこの態度。
黙っているわけにはいかなかった。