* * *――…
休憩中に、喫煙室の窓から外を見つめると激しい雨が降っていた。
空はどんよりと暗い。
傘を持ってきていないことを思い出し、駐車場までの距離を考えて憂うつになった。
この日の遅番は、私と佐倉くん。
19時に中番だった山崎くんが退勤して、閉店までは後2時間。
佐倉くんにはレジに慣れてもらおうと思っていたのに、厳しい雨のせいか客足は伸びなかった。
一昔前の歌謡曲が流れる店内は、閑散として静まり返っている。
私は発注をしつつ、レジの佐倉くんを時々観察した。
佐倉くんには、こんにゃくゼリーの創り物をやってもらっている。
5本ずつ袋に入れて、¥105で販売しているものだ。
黙々と作業をこなしていく佐倉くんに、先日のような態度はない。
真面目で爽やかで器用な姿を見ていると、自分が見たものは幻覚だったのかもしれないと思うほどだった。