「最近食べることばっかり楽しみになっちゃって。また太っちゃった。」





私は、そんな若菜の背中を見つめていた。





高校時代からの親友だった若菜は、今じゃ2児のママだ。



昔はスリムな体型だったけど、いつのまにか肝っ玉母さんといった雰囲気で貫禄さえある。


本人は太ったことを気にしてるけど、その背中は私が思い描く母親そのもの。






若菜は私のことを羨ましいと言うけれど、私からしたら若菜の方が羨ましい。



たまの休日を利用して、こうして若菜の家に遊びに来るたびにそう思うのだった。



リビングに飾られた家族写真が温かい家庭を物語っている。


可愛い子供たちはいるし……私は溢れる母性をどこに持っていけばいいのやら。




そんなことを考えていると、若菜の息子である5歳になったばかりの絢斗(アヤト)がトコトコと近づいてきた。




「芳乃姉ちゃん!」


「ん?」


「今日はお土産は?」



無邪気に言う絢斗に対して、若菜の声がキッチンから届いた。


「絢!」




私はクスクスと笑いながら口を開いた。


「いいのよ。駄菓子屋の芳乃姉ちゃんは、いっつもお土産持ってきてくれるって分かってるんだもんねぇ〜。」




小さな絢斗は硝子玉のような瞳をキラキラと輝かせる。