芳乃さんが起きないのをいいことに、彼女の眼鏡を手に取る。


赤いフレームの眼鏡を、
起こさないよう慎重に、芳乃さんにかけてみる。




「ん。」



長い睫毛が少し揺れたが、芳乃さんは目覚めない。



俺はまた、静かに笑みを零す。

こんな子供じみた一人遊びまでやるなんて重症だな。





芳乃さんに覆いかぶさると、ベッドがギシリと音を立てた。


耳元に、唇を寄せて囁く。



「愛してますよ。」





起きていたら、きっと頬を赤く染めるであろう芳乃さんを想像する。


仕事では大人なのに、少女のような顔をするから可愛くて堪らない。


だから、からかったり、イジメてやりたくなる。




俺は曖昧に笑って、適わねぇな、と呟いた。






貴女には適わない。

俺は貴女でいっぱいだ。