小さい頃から、
菫の代わりに、菫の分までちゃんとしなきゃって思ってた。
両親をこれ以上、困らせないように。
本当のことを言えば、私だってピアノを習ってみたかった。
大学進学もしたかったけど、我慢して就職の道を選んだ。
そういうの、誰も気づいてないんだもんなぁ…。
さすがにイタい。
今さらグレたりなんて出来ないし、性に合いすぎてた“優等生”から脱皮なんて出来ないけど……ときどき思う。
私はいつまで“いい子”でいればいいんだろう、なんてね。
羨ましくなるんだ。
行き当たりばったり、
その瞬間、瞬間の気分で生きてて、奇跡みたいな才能のある菫が。
若くて、可愛くて、要領が良くて、甘え上手のマリちゃんも。
私は、
そんなふうになれないから。
至って平凡な容姿と、生真面目すぎる性格。
モテた経験もなく、
言い寄られたことも、
ナンパされたこともなく、
27年間彼氏がいないという最大のコンプレックス。
父と母には申し訳ないけど、結婚、孫の顔なんて夢のまた夢だ。