「…お姉、まだ食べるの?」
「まだまだぁ!あと30分もあるんだから!」
ケーキを頬張る。
頬張る。
頬張る。
「モンブラン美味しー!
このレモン風味のタルトも最高!タルト生地にレモン風味のクリームがぁぁ!」
そんな私の様子をじっと見ていた菫は呟いた。
「…ガトー・モカ懐かしいなぁ。」
「ん?」
「子供の頃から好きだったでしょ。あたしたち、顔も性格も似てないけど好きなケーキがガトー・モカは一緒。」
「確かに。」
丸い真っ白な皿にガトー・モカ。
コーヒーとホワイトチョコレートのスポンジ生地と、バニラクリーム。
周りはコーヒー味のマカロンで飾ってある。
貧乏だった岡田家、ケーキなんて誕生日以外は食べられなかった。
私と菫の誕生日、つまり年に二回だけ近所の小さなケーキ屋のガトー・モカを食べられた。
「変な子供だよね。普通ショートケーキとかチョコレートケーキとかなのに、ガトー・モカが一番なんて超マニアック。」
菫は言いながら笑って、私もつられてクスクスと笑った。