「…芳乃さん。俺、もともと金貯めたくてバイト始めたんです。」
「…え?」
「留学資金にしたくて。」
「……留学って…?」
「そのつもりでバイト始めたくせに迷ってたんです。貴女の傍にいたくて。…でも、そういうところがダメなんですよね。」
「ちょ、ちょっと待っ…。」
何を言っているのか、何を言われているのか、私はただ混乱していた。
「分かったんです。」
「えっ?」
「自分のこともロクに出来ねぇのに気持ちばっかり押しつけて、俺はただのガキでした。
今のままの俺じゃ、貴女の傍にはいられないから。」
「…………。」
「…予定どおり、年が明けてからオーストラリアに留学します。報告が遅くなって、本当にすみません。」
私は今、酷く後悔している。
この時、何も言えなかった自分を。
今のままのキミで構わないのに、とどうして言えなかったんだろう。