エプロンを脱いで、ふと自分のカバンの隣に見慣れない箱が置いてあることに気づく。
リボンと包装紙を解くと、箱を開けなくても何であるかが分かった。
「…佐倉くん。」
バックルームから顔を出すと、佐倉くんは私の代わりにレジに立っていた。
こちらに背を向けている佐倉くんの表情は見えない。
「こ、れ…。」
箱の中に入っていたのは、イチゴのタルトだった。
ハピーズ飯崎店一階にあるケーキ屋の物のようだ。
「…ちゃんとしたクリスマスケーキは売り切れで、だから雰囲気だけでもと思って。」
惜しむことなく使われたイチゴにはシロップのようなものがかかっているのかキラキラと光り輝いている。
これを買うためだけに店を出て、そのまま戻ってきてくれたのだと思うと涙が零れそうになる。
じんわりと心に広がる何かが、
私の内側を満たしていく何かが答えだった。
伝えたいと。
伝えたいと、思った。
私の気持ちを。