「あのね」、と菫が口を開く。
「あのね」とか、「それでね」とか、「あたしね」とか。
その言い方は子供の頃から変わらない。
私はそれを、“妹らしい話し方”だと思っている。
「あたしね。」
「うん。」
「…結婚したの。」
「う……は?」
……“結婚しようと思うの”じゃなくて“結婚したの”。
“結婚したの”!!?
間抜けな顔をしていることは分かっていたけど、それどころじゃない。
「い、いつ?」
「2ヶ月前。」
「あ、相手は?」
「ハワイで知り合ったアメリカ人。」
呆然とする私に、菫はやっぱり困ったような笑顔を向ける。
「…やっぱ、勝手に結婚したのってマズかったかなぁ?」
「…当たり前でしょ…。」
音大を辞めた時も、ハワイへ行った時も、
どうしていつも、この子は事後報告なんだろうか?
そりゃ娘が勝手に結婚してたら親はブチギレるわな。