「わぁーっ!お姉、けっこうイイ所に住んでんじゃ〜ん!」


部屋を見渡してくるくると回る菫に、私は溜め息を零す。




「お姉!しばらく、ここに置いてもらってもいい?」


「…それは構わないけど。…っていうか、ちゃんと実家に顔出した?お母さんたち、あれでも心配してるのよ。」


「出した、出した。でもブチギレでさぁ、追い返されちった。」




その言葉に、嫌な予感が駆け巡る。




「…菫、アンタまさか…また何かやったの?」


恐る恐る尋ねると、菫は困ったように笑う。



「まぁまぁ。ビールでも飲みながら、ゆっくり話そうよ。」


冷蔵庫を勝手に開けると、缶ビールを2つ取り出して1つを私に差し出した。



「おっ!いいじゃん、このバルコニー!お洒落ー!!」



菫はカラカラと窓を開けると、石畳のバルコニーへ飛び出す。

渋々、私もビールと煙草を片手に菫の後を追った。





「夏なら超気持ち良いだろうねぇ〜。」


ゴクゴクと喉を鳴らしてビールを飲みながら、菫は無邪気に笑っていた。




「…で、今度は何やらかしたの?」


「…厳しいなぁ、お姉は。」


そう言って肩を竦めてみせる菫には気づかないふりをして、煙草に火をつけた。

ゆっくりと煙を吸い込み、吐き出す。

吐き出した煙は、夜空に浮かんで消えた。