菫から聞かされる話は、いつも私にとっては奇想天外だった。
例えば、菫が高校生の頃。
「お姉!あたし、彼氏ができたー。」
「そう。良かったじゃない。」
それから、5時間後。
「お姉!あたし、彼氏と別れたからー。」
「………は?」
菫が高校生の頃といえば、こんなこともあった。
学校から帰ってくるなり、
「お姉!あたし、今日の朝、駅でナンパされちゃった!」
という報告だ。
「へぇー。」
「それでね、あたしも気になったから、学校サボってついていったの。」
「…は?ついてったって…ナンパに?」
「うん。あっ、でも心配しないで。いつも駅で見かける人だったし。」
ほわんとした笑顔で答える菫に、私は眉をひそめる。
「…どんな人なの?高校生?」
「ん?ホームレスのオジさん。」
「………は?」
変人で奇天烈な妹の可笑しな武勇伝は数知れず。
そんな不可思議な菫が突然、ハワイから帰国した。