「芳乃さん!聞いてます?」
「え!?」
私を見つめる佐倉くんの顔が、とんでもなく至近距離にあった。
「きゃあぁぁっ!!」
「えーっ!きゃあって…人を痴漢みたいに…。」
佐倉くんは大袈裟に肩を竦めてみせる。
「だ、だって…。」
こっちだって、びっくりしすぎて口から心臓が飛んでくかと思った。
「どうしたんですか?ボーッとして。」
「え…私、ボーッとしてた?」
佐倉くんは私をまじまじと見つめて、溜め息を吐く。
「芳乃さん、東京から戻ってから可笑しいですよ。」
「(ギクリ)」
「連絡だって全然くれなかったし。」
「……忙しくて。」
「…そんなに放置されたら、俺だって心折れますよ。」
その言葉がチクリと胸に刺さる。