波の音に紛れて聞こえた言葉が、私の心に張りついた。
路木さんは、私を真っすぐに見つめている。
「……え…。」
口から言葉が出てこない、頭はうまく動いてくれない。
「大切にしすぎると、言えなくなるんだよ。」
いつものように誤魔化したり、隠したりはしない。
冗談だとも言わない。
路木さんの目は真剣だった。
その瞳に、射ぬかれてしまいそうだと思った。
「俺は、ずっと君を見ていた。」
「路木さん…。」
喉がカラカラに渇いている。
波の音を、急に遠くに感じた。
「俺と、ドラマティックな恋をしよう。
恋をして、結婚してほしい。」