海に辿り着くと、車を降りて砂浜を歩いた。



空はだんだんと白み始め、次第に明るくなっていく。



波の音、海の匂い、
風は少し冷たいけど酔いを覚ますには丁度良い。





私は前を行く路木さんの背中を見つめながら、
彼と過ごした10年にもなる月日を思い浮べていた。



路木さんがイタリアへ行ってしまったら、こんなふうに飲みに行ったりも出来なくなるんだね…。







「…路木さん。」


「ん?」




遠い目をして海を見つめる横顔が、朝焼けのせいなのか憂いを感じさせた。

きっと、世の女子が“王子様”と呼ぶのは、こういう人のことだろう。