時間を忘れていたのだろうか。
酔っているせいで、時間の感覚が可笑しくなっていたんだろうか。
時が経つのは早い。
結局、私は一晩中、路木さんを付き合わせて飲み明かしてしまったのだ。
そして、いよいよ焦ってきた自分がいる。
何度も、何度だって、チャンスはあったのに切り出せなかった。
路木さん。転勤するって本当ですか、と。
路木さんの口から真実を聞きたくて「飲みに行きましょう!」、と誘ったクセに。
タイミングが分からなくて躊躇い、いざとなると尻込みしてしまった。
転勤は路木さんにとっては大出世なわけで、それが真実なら本当にスゴいことだと思う。
でも、10年も仕事を通して育ててくれた、支えてくれた、信頼できる上司を失うというのは、やっぱりどこか寂しい。
……まぁ、だからって子供みたいに泣き喚くわけじゃないけど。
それでも。
どうしても、本当のことは路木さんの口から聞きたいんだ。