居酒屋を何軒も梯子して、運転している路木さんは呆れ顔。
「芳乃ちゃん、少しは運転する奴の身にもなろうか?」
「飲めないですもんねぇ〜。じゃあ〜路木さんの分まで私が飲みますよっ。頑張ります!」
「いや、頑張んなくていいから。」
「えー。」
信号が赤で、車は緩やかに速度を落として止まった。
口を尖らせる私に、路木さんは容赦なくデコピンをする。
「いっ!?」
「大体、いつにも増して飲み過ぎ!」
「そんなことないデス!まだまだ飲むぜぃ!」
妙なテンションになってきた私の両頬に、路木さんの手が包むように触れた。
「嘘つけ。ほっぺ熱ちぃぞ。」
グイッと引き寄せられて、至近距離で路木さんと見つめ合う形になり、私の心臓がドクンと鳴った。
「…酔って、ないです。」
目を逸らしてはみたものの、状況は変わらない。
何とも言えない、奇妙な沈黙が流れる。
「…芳乃ちゃん。」
囁くような低い声が色っぽくて、ゾクリとした。