「芳乃ちゃん。」




その声で、現実に引き戻される。



ショーウインドーに背を預けていた私が目を開けると、見慣れたパールに輝く車、そして運転席から降りてきた路木さん。

今日もスーツがよく似合っている。





「大丈夫?ぼーっとしてたみたいだけど。」


「あー…寝てましたっ。」


「えぇ!?」


「あはは、冗談ですよっ!よぉしっ!今日も飲むぞぉぉ!!」


拳をグンッと夜空へ突き上げる。


路木さんはホッとしたように笑った。

それは、あの頃と変わらない優しい笑顔だった。