初めて会った日のことを、私は今も鮮明に覚えている。
当時、私は高校生で。
あれは、『みかづき屋』ハピーズ飯崎店のアルバイトの面接で。
優しそうな眼差しに、温厚そうな笑顔。
すらりと背の高い、大人の男の人。
昔から変わらず綺麗な顔をしていて、
私はこんなに美人な男の人を見るのは初めてで、衝撃と同時に唖然としてしまった。
「駄菓子好き?」
「え…はい。」
終始、緊張しっぱなしの私に、路木さんは笑顔でそう聞いて。
「何が一番好き?」
「…金平糖…かな。」
あの頃、まだ敬語もまともに使えなかった私に、
「そうか。俺も、金平糖が一番好きなんだ。」
仕事を教えてくれた。
働いてお金を稼ぐ事の苦労も喜びも、
社会の厳しさや世の中のルールも、
私は路木さんの背中を見て学んだ。
青臭い悩みも聞いてくれて、
必要な時には叱ってくれて、
泣きたい時は…ただ隣にいてくれた。
今の私があるのは、路木さんのおかげ。
出会ってから――もう、10年にもなる。