鶏の手羽肉はスパイシーな味がした。
一風変わった生春巻からはレモンの爽やかな匂いが漂う。
「仕事も、恋愛も、こんなに本気になってんの初めてです。」
「…佐倉くんは私のどこが好きなの?」
食事に夢中なフリをして、平静を装い尋ねた。
ビールを、喉へと流し込む。
「最初は、からかい半分でした。
でも、仕事に一所懸命な姿を尊敬するようになりました。
生真面目で、時々鬱陶しいくらい熱いクセに、バイトにまで気ぃ使って神経すり減らしたり。損得なんか抜きにして直向きに頑張ってる芳乃さんはカッコ良くて――俺は、そんな貴女に恋をしました。」
「…………。 」
「芳乃さん?」
「…………。」
「おーい、芳乃さぁん?」
佐倉くんは余裕の笑顔、私は耐えきれずに俯いた。
「自分で言わせておいて何を照れてるんです?」
「うるっさい!」
「顔、真っ赤ですよ。」
口角を上げてニヤリと笑う佐倉くんに、私は俯いたまま文句を言うしかない。
あぁ、どうしよう。
ジワリと、心に温かいものが広がっていく。
佐倉くんは、ちゃんと私を見てくれていたんだ。