私が声をかけるより先に、佐倉くんは私を発見して余裕たっぷりの笑顔で言った。



「来てくれたんですね!」


「…まぁね。」




つい素っ気ない返事をしてしまう。


でも、佐倉くんはそんな事は一切気にしない様子の笑顔、
それが何だか気恥ずかしくて私の口からはまた可愛げのない言葉が飛び出してしまう。




「てゆーか何で電車?免許あると今さら面倒じゃない。」





言ってしまってから後悔する。


本当は電車だって構わないのに。

そんな事にこだわっていないのに。




「すみません。」



佐倉くんはそう言いながらもやっぱり笑顔で、
私がキツい事を言ったのに、嬉しそうに、照れ臭そうに、ふにゃりと笑っていた。






何だか、自分が子供っぽいような気がしてくる。



その笑顔を見ていると私まで照れ臭くなって、
それを隠すためにムスッとしていれば、佐倉くんはニコニコしながら手を差し出した。


「行きましょうか?」







その手はいつかのように熱くて、熱は脳まで駆け上がる。





手を繋いでいるのに、どうしてか隣を歩くのは気が引けてしまう。



佐倉くんは、そんな心を見透かしているかのように振り返って微笑すると、グイッと私の手を引っ張る。


ほとんど強引に隣に引き寄せられて、
そうなると、もうどこからどう見てもデートだった。