私は、佐倉くんを好きになってく自分を認めたくないだけ。
恋愛をする勇気がないから認めたくないだけ。
本当は、分かってるんだよ。
「煙草、吸ってくる。」
食事の後で喫煙室に行こうとした私に、佐倉くんは「俺も行きます」と言った。
小さな喫煙室の中で、私たちは並んで煙草を吸う。
佐倉くんの煙草は赤いマルボロだった。
喫煙室は、フードコートの賑やかさから切り離されたように静かな空間で、
向かいの椅子に腰掛けて煙草を吸っていた若い男が立ち去り、そこには私と佐倉くんだけになった。
ふと、煙草を吸う佐倉くんの横顔が目に入り、
私は、しまった、と思った。
煙草を挟む細く長い指先と、男の子なのに赤い唇。
あぁ、心臓が煩い。