「た、多分…。」
「マジですかぁ!?きゃー!どうしようっ!マリのタイプだったらヤバいですよぉ〜!」
……つーか、マリちゃん。
アナタ、彼氏いるでしょ…。
若い女の子の弾んだ声に、どうにもついていけず…。
抗うことの出来ない世代ギャップを感じてしまう。
平日の夜。
大型ショッピングモールの3階にある小さな駄菓子屋『みかづき屋』に、客は高校生のカップルと若い男の子の4人組だけ。
店の中も酷く乾燥していて、ここまで来ると暑ささえ感じる。
『本日もハピーズ飯崎店へお越しくださいまして――』と、ショッピングモール内全体に流れるアナウンス。
午前10時から午後9時まで営業している『みかづき屋』も、もうすぐ閉店時間だった。
ふと、店内に流れる有線の音楽に違和感を覚えた。
「…マリちゃん。」
「はぁい?」
まだ見ぬイケメンに思いを馳せていたのか、
マリちゃんはぼんやりと間の抜けた返事をする。
「また動かしたでしょう?」
「…あぁ!はいっ!」
自信満々に、はいっ!、って……。
『みかづき屋』で流す音楽は70年代、80年代のJ-POPと決められている。
しかし、マリちゃんは勝手に最新ヒットソングに変えてしまうという前科を持っていた。