面接を終えて店に戻ると、本日の遅番であるマリちゃんが瞳を輝かせながら駆け寄ってきた。
「芳乃さん!面接どうでした?」
鼻にかかるような甘ったるい声と、独特のスロウテンポ。
「ん?採用!」
「マジですかぁ!可愛いコでした?」
上目遣いとアヒル口で尋ねる、まだ19歳のマリちゃん。
柔らかそうな黒い髪が、ふんわりと揺れている。
「あぁ…それが女の子じゃなかったの。」
「え?」
マリちゃんはチワワのように円らな瞳をパチパチとさせた。
「“ホタルちゃん”じゃなくて、“ケイくん”ですって。」
「…男の子?」
「うん。」
「えー!?どんな人でした?イケメン?」
何がそんなに楽しいのか、
マリちゃんは急にテンションが上がる。