「…今なら分かる気がします。」


「えっ?」




ホットミルクが入ったマグカップに視線を落としたまま、マリちゃんはポツリと呟いた。






「佐倉くんが、マリじゃなくて芳乃さんを選んだワケ。」


「…へ?」



言っている意味が分からずに困惑している私を見て、クスクスと笑いだすマリちゃん。




「告ったら、『好きな人がいる』って言われたんです。それは、『尊敬できる大切な人だ』って。
それって、きっと芳乃さんのことですよね?」


「ッな!何でっ!?」



焦ったように聞き返せば、マリちゃんはまたクスクスと笑いだす。






「マリ、本当は告る前からどっかで気づいてました。好きな人の視線の先に誰がいるのかなんて、見てれば分かります。
あの時は…『どうしてマリじゃなくて芳乃さんなの!?』って思ったけど、今なら分かる気がします。
芳乃さんはいつも本気で、いつも100%で、たかがバイトのマリなんかにも真剣に向き合ってくれる。
マリは今までも色々なトコでバイトしてきたけど、そんな上司に初めて出会いました。」










マリちゃんの清々しそうな、爽やかな笑顔を前にして、私は未だに困惑していた。







……佐倉くんが、私を…?