「どうぞ。」
私の声に、マリちゃんが顔を上げた。
涙でクシャクシャになった顔が痛々しく切ない。
「どーせ何も食べてないんでしょう?」
マリちゃんは目の前に置かれたおにぎりに虚ろな視線を向ける。
梅干し入りの、少し歪な三角形の小さなおにぎりが2つ。
「形は悪いけど、何か食べなくちゃ力も出ないでしょう?」
首を傾げて言った私を見つめて、
マリちゃんの頬には、また一筋の涙が伝った。
「マリちゃん、私ね“頑張れ”っていう言葉があまり好きじゃないの。頑張ってる人に“頑張れ”なんて言えないもの。
だからね、私は“一緒に頑張ろう”って言うの。」
「……ッふぇ…ウっ…。」
「マリちゃん、一緒に頑張ろうよ。」
「…芳乃さぁ〜〜んっ…!」
涙で濡れた顔をそのままに、マリちゃんはおにぎりに手を伸ばした。
嗚咽を洩らしながら噛りついて、
「しょっぱいです。」
と呟く。
涙の味がするおにぎりを泣きながら頬張って、笑うマリちゃん。
その顔を、私はとても綺麗だと思った。