「それから佐倉くん。」
「…はい。」
「キミは今すぐ店に戻って。仕事中に自分勝手に飛び出してくなんてのも言語道断。」
「…すみませんでした。」
「私じゃなくて香織さんに謝って。」
私の声は自分の予想を越えて、きつく刺々しく聞こえた。
佐倉くんは何か言いかけたようだけど、結局黙って行ってしまった。
「ウザイ」、「熱い」と思われたって、
私は27年も『私』なのだから、『私』でしかいられない。
頭に血が上っていたかのような熱が、一転して冷えていく。
さめざめと。
冷静さを取り戻してくると心まで急激に冷たくなっていくようで、言いようのない虚しさに駆られた。