冬の午後の日差しが部屋の中を満たす。
「日当たりがいいわね。」
思ったことをそのまま呟いて、私はコーヒーを口にする。
マリちゃんは何も言わなかった。
「…何かあったの?『辞める』だなんて。」
唐突に切り出す、
マリちゃんは俯いたままで長い睫をピクリと揺らした。
何も言葉にしてくれないマリちゃんを見つめて、私はどうしたらいいものかと思う。
店には、いま香織さん一人。
あまり時間がないのだ。
マリちゃんの様子を目にして心配はどんどん増していく。
マリちゃんが望むのであれば、今ここで話を聞いてあげたいのだが…。
「…ねぇ、マリちゃん。佐倉くんがここに来なかった?」
佐倉くんの名前を出した途端、マリちゃんは慌てたように顔を上げた。
「どう、して…。」
「マリちゃんから『辞めたい』って電話があったのを聞いて、佐倉くん『自分のせいだ』って飛び出して行っちゃったらしいの。
私より早く出たはずなのに可笑しいわね。」
私がそう言うと、マリちゃんはまた俯いてしまった。