平日の昼過ぎ、
店が混雑していないことは今は何よりの救いだ。





「香織さん、マリちゃん何かあったの?」


「分かりません…。」


「何か聞いてない?最近、様子が変だったとかは?」


「…………。」


香織さんは眉を寄せて考えているが、何も思い当たらないようだ。




「…佐倉くんはどこ行っちゃったか分かる?」


「…たぶんマリちゃんの家だと思います。」


「え!?」


「あれを見てから飛び出していって…。」



香織さんが“あれ”と言って指差した物はバックルームの壁に貼ってある連絡先の紙。

私を含め、バイトメンバー全員の携帯電話の番号と住所が書いてある。






私は堪らず頭を抱えた。



あのバカ!一体、何しに行ったんだ!?

遅番のマリちゃんがいないうえに、中番のキミまでいなくなったら店が回んねぇだろがっ!!




試しに佐倉くんの携帯電話にかけてみるが、佐倉くんは出ない。




困ったように私を見つめる香織さんに、私は言った。



「……佐倉くんを、連れ戻してくる。マリちゃんの家まで行って、いないようならすぐ戻ってくるから。
香織さん、悪いけどもう少し一人で大丈夫?」


「それは大丈夫ですけど…もしもいなかったら今日のシフトどうしましょうか?」


「…いなかったら私がやる。香織さんは通常どおりの時間で上がって大丈夫だから。」