ストレートに千早を心配する梓月も、 不安な思いを表に出せるリョウも、 大人の余裕で見守る香住も、 俺はどうしようもなく羨ましくて腹が立った。 俺には、そのどれも出来なかった。 別に、なんて思ってやしない。 ……じゃあ、俺は何がしたかったんだろう。 ――何を言いたかったんだろう。 並んで歩く俺と千早の間を、風が擦り抜けていく。 もう、夏の匂いがしていた。