爽やかな風が、俺と千早の間を擦り抜けていく。
朝の光に照らされた千早の横顔は凛としていて。
街は静けさに包まれている。
見慣れた景色のはずなのに、不思議と鮮明に映っていた。
一人ぼっちで生きることが当たり前だった、
そんな悲しい思いをいくつも味わってきたのだろう千早は、寂しさを微塵も見せない。
弱音も吐かない。
ただ、それこそ本当に、
砂漠に咲く花のように大地に根をはって生きている。
“壱はどうなんだよ!心配じゃねぇのかよ!?”
“……別に。”
俺は、どこかで保護者のような気持ちでいたのかもしれない。
千早の秘密を知っているのは俺だけで、だから。
だから――。