「って言っても、母親は最初から俺に興味なかったし、父親なんて顔も名前も知らねぇ。
ウチの母親はとんでもない男好きでさ、テメェでも誰の子だか分かんねぇんだぜ。笑うだろ?」



でも、壱は何も言わなかった。



「ガキん時から施設と家を行ったり来たり。
その施設も小6ん時に問題起こして追い出された。
そこの職員に頭オカシイ奴いてさ、夜に俺の部屋に忍び込んできてヤろうとしてんの。
だから、ぶん殴ってキ○ケリ入れたら追い出されたんだよなぁ。」


俺の渇いた笑い声が、虚しく響いた。




「母親はガキなんかいたら男といるのに邪魔だって。金だけやるから好きなとこで勝手にやってけってさ。まっ、ガキに渡すには異常な大金だったけどな。
それから、ずっと、ホームレスだ。
金が底をついたら母親にせびって、さ。」


「…………。」


「…歌手になりたいと思ったのは、あのババァを見返すためだった。
テメェみたいな女のガキでも立派に生きられんだって証明してやりたかった。」


「…………。」


「カエルの子はカエル、だっけ?
ウチの母親、AV女優なんだ。その世界じゃ伝説的な存在?けど、もうババァだから落ち目でさ。
……あのババァ、高校卒業したら同じ道に来いって言いやがったんだ。はっ、俺を名門女子高に行かせたのも、AV女優になった時にハクがつくからだってさ。
母娘でAV女優なら話題にもなってって――。」









突然、話を遮られたのは、そこで壱に抱きしめられたからだ。




もういい、と言わんばかりに俺をきつく抱きしめる。