戸惑う俺を放置したまま、とろんとした瞳で話を続けるリョウ。







「……ボク、昔デブだったんだ。」


「………は?」


「みんなから、デブ!キモい!ってイジメられてたぁ。悔しくて、ダイエットして…。
日本一…世界一のホストになってアイツらのこと見返してやる…。」





リョウは目に涙を浮かべていた。



その歪んだ顔は、酷く胸を締めつける。






俺の横にいた壱もまた、同じ気持ちだったのだろう。

「…酒癖悪ィだろ?人に絡んじゃあ、昔話するんだよ。リョウは。」


「…そうか。」






俺はリョウの目を見据えて、口を開いた。



「見返してやれよ。」


「…………。」


「大丈夫だ。アンタはデブじゃねぇし、キモくもねぇ。アンタはアンタだろ?
立派なホストになりゃいいさ。
そんで、いつか、笑い飛ばしてやりゃあいい。」










そうか。そうだよな。

誰だってツライ傷の一つや二つ、あるんだよな。












「千早ー…。」


「んー?」







――傷が疼くのは、俺だけじゃねぇんだ。










「…ありがと。」


「……うるせぇ。」